
| 【この記事のポイント】 「子どものことで裁判沙汰にはしたくない。でも当事者だけの話合いでは解決しない」――いじめや学校トラブルで、多くの保護者が抱えるジレンマです。こうした場面で活用できるのが、ADR(裁判外紛争解決手続)の一つである弁護士会の「示談あっせん」です。中立公平な第三者として弁護士が関与し、非公開の場で話合いによる解決を目指します。埼玉弁護士会も、いじめ問題など学校トラブルを適した事案として挙げています。本記事では、示談あっせんの仕組み、裁判・調停との違い、費用の目安を、被害者側の立場から解説します。 |
1. 「裁判はしたくない、でも話合いも進まない」

いじめや学校とのトラブルに直面した保護者の多くが、同じジレンマを抱えます。子どものことで裁判沙汰にはしたくない。でも、当事者同士だけで話し合っても平行線で、感情的な対立が深まるばかり。中立公平な第三者に入ってもらいたいけれど、適当な人が見つからない――。
埼玉弁護士会も、いじめ問題など学校との間でのトラブルが増えていること、親御さんとしては子どものことで裁判沙汰にしたくないとの思いが強い一方、中立公平な第三者を入れて話し合いたくても適当な第三者が見つからず、納得のいく話し合いの場が持ちにくい現状があることを指摘し、こうした場合にこそ示談あっせん手続が適していると説明しています。
| ADR(裁判外紛争解決手続)とは 裁判によらずに、中立公平な第三者が関与して紛争の解決を図る手続の総称です。弁護士会が行う「示談あっせん」はその代表例で、話合いによる柔軟な解決を目指します。 |
2. 弁護士会の「示談あっせん」とは

示談あっせんとは、端的にいえば「話し合いで解決する手続」です。弁護士会では、法律の専門家である弁護士が中立公平な第三者(あっせん委員)として関与し、話し合いによる紛争解決を助けます。
類似の手続として行政書士や司法書士が関与するものもありますが、弁護士は法律分野全般について訴訟代理を行うことができるため、仮に訴訟になった場合の見通し等も踏まえたうえでの話合いが可能になる、という違いがあります。「もしこれが裁判になったらどうなるか」という相場観を踏まえて話し合えることは、当事者双方にとって、現実的な着地点を見つけるうえで大きな意味を持ちます。
3. 裁判・調停との違い

示談あっせんが、裁判所の裁判(訴訟)や調停とどう違うのか。埼玉弁護士会の説明をもとに整理すると、次のようになります。
| 示談あっせん | 調停 | 裁判 | |
| 担当者 | 弁護士が担当 | 弁護士に限らない | 裁判官が担当 |
| 公開/非公開 | 非公開 | 非公開 | 公開が原則 |
| 進行 | 2〜3週間に1期日 | 1〜2か月に1期日 | 1〜2か月に1期日 |
| 解決方法 | 金銭での解決に限らない | 金銭での解決に限らない | 金銭での解決 |
| 場所・日時 | 相手方と調整した時間。土曜開催も可能な場合がある | 裁判所が指定(平日夕方まで) | 裁判所が指定(平日夕方まで) |
特徴的なのは、進行の速さと柔軟さです。裁判所の手続では期日が1〜2か月に1度程度になりがちなのに対し、示談あっせんは2〜3週間に1度の期日開催が可能とされ、早期の解決が望めます。また、裁判所と異なり管轄という概念がないため、遠方の裁判所に出向く必要もありません。さらに、あっせん委員は事件ごとに選任される弁護士であり、法律の専門家が必ず関与する点も、調停との違いとして挙げられています。
4. 費用の目安

費用面も、検討の重要な要素です。埼玉弁護士会の示談あっせんでは、申立手数料は無料(郵券代として別途3,300円)で、期日が開かれるごとに期日手数料(申立人・相手方それぞれ各5,500円)、示談が成立したときに成立手数料がかかる仕組みです。成立手数料は紛争解決時の経済的利益の価格に応じて決まり、申立人と相手方の負担割合を定めたうえで支払います。
| 経済的利益の価格 | 示談成立手数料(双方合計・税込) |
| 20万円 | 11,000円 |
| 50万円 | 27,500円 |
| 100万円 | 55,000円 |
| 200万円 | 99,000円 |
| 300万円 | 143,000円 |
| 1,000万円 | 319,000円 |
裁判や調停では、紛争額に応じた収入印紙を裁判所に納める必要があり、申立費用が高額化することがあります。これに対し、示談あっせんは申立手数料が無料で、申立て自体もご自身で十分に可能とされています。もっとも、成立手数料まで含めた総額は事案によって変わりますので、実際に検討する際は、最新の費用体系を弁護士会にご確認ください。
| 【注意】費用や運用は弁護士会・時期により異なります 本記事で紹介した費用は埼玉弁護士会の例です。お住まいの地域の弁護士会でも同様の手続が行われていることが多いですが、費用や取扱いは弁護士会ごとに異なります。最新の情報は、各弁護士会にご確認ください。 |
5. いじめ・学校トラブルでADRを使うメリット

- 非公開の手続なので、子どものプライバシーを守りながら話し合える。
- 金銭に限らない解決(謝罪、今後の対応の取り決めなど)を目指せる。
- 中立公平な弁護士が間に入るため、当事者だけの話合いより冷静に進みやすい。
- 裁判になった場合の見通しを踏まえた、現実的な着地点を探れる。
- 期日の間隔が短く、早期の解決が期待できる。
- 厳格な立証までは必ずしも求められず、話合いによる柔軟な解決が可能。
とりわけ、いじめの事案では、被害を受けた子どもが望んでいるのが必ずしも金銭だけではない、という点が重要です。謝罪してほしい、事実を認めてほしい、二度と同じことが起きない仕組みを作ってほしい――そうした願いは、判決という形式では実現しにくいものです。話合いを前提とするADRは、こうした願いを解決の内容に含められる点で、いじめ問題との相性が良い手続といえます。
6. ADRの限界と、使い分け

一方で、ADRにも限界があります。示談あっせんはあくまで話合いの手続ですので、相手方が応じなければ手続は進みません。相手方が全面的に争う姿勢を示している場合や、事実関係に鋭い対立があって、証拠に基づく厳格な事実認定が必要な場合には、訴訟の方が適していることもあります。
また、いじめの重大事態調査など、行政上の手続で解決すべき部分もあります。「学校に重大事態としての調査を求める」「報告書の記載の訂正や再調査を求める」といった要求は、まず教育委員会や学校法人への申入れという形で進めるのが筋です。そのうえで、それでも解決しない部分について、ADR、調停、訴訟という順に検討していく、という整理が現実的です。どの手続が最も適しているかは、相手方の姿勢、争点の性質、求めるものによって変わります。
| こんなときは | 検討したい手続 |
| 相手方に話合いの姿勢があり、非公開で早く解決したい | 弁護士会のADR(示談あっせん) |
| 設置者(学校法人・自治体)と裁判所の場で話し合いたい | 民事調停 |
| 事実関係に鋭い対立があり、証拠に基づく判断が必要 | 訴訟 |
| 調査そのものの実施・やり直しを求めたい | 学校・教育委員会・所轄庁への申入れ、再調査の要求 |
7. 申立ての流れと、準備しておきたいこと

示談あっせんの申立ては、弁護士会に備え付けの所定用紙に必要事項を記載するだけで行えるとされており、記載例も用意されています。申立てが受理されると、弁護士会から相手方に手続への応諾を確認する連絡がなされ、相手方が応じれば、事件ごとに選任されたあっせん委員(弁護士)のもとで期日が開かれます。期日では、双方から事情を聴きながら、あっせん委員が解決案を探っていきます。合意に至れば示談が成立し、合意書が作成されます。
準備として大切なのは、「何を求めるのか」を整理しておくことです。金銭的な賠償なのか、謝罪なのか、今後の対応の取り決めなのか。複数ある場合は、その優先順位も考えておきましょう。あわせて、いじめの事実関係を裏づける資料(LINEやSNSの記録、診断書、学校とのやり取りの記録、調査報告書など)を時系列に整理しておくと、話合いが具体的に進みます。厳格な立証までは求められない手続とはいえ、こちらの主張を裏づける材料があるかどうかで、話合いの説得力は大きく変わります。
| 申立て前に整理しておきたいもの ・求めたいこと(賠償・謝罪・今後の取り決め等)とその優先順位 ・受け入れられる解決の範囲(どこまでなら合意できるか) ・事実関係を裏づける資料(記録・診断書・報告書等)の時系列整理 |
8. まとめ――選択肢を知ることが、力になる

いじめや学校トラブルで悩む保護者にとって、「裁判か、我慢か」という二択しかないと感じることが、最も苦しい状況かもしれません。しかし実際には、弁護士会のADR(示談あっせん)、裁判所の民事調停、訴訟、そして行政への申入れという、複数の道があります。それぞれに向き不向きがあり、事案の状況によって最適な選択は変わります。どの手続を選ぶべきか判断に迷うときは、まず専門家に状況を整理してもらうところから始めてみてください。選択肢を知ることが、解決への第一歩になります。
| グリーンリーフ法律事務所からのメッセージ 私たちは、開所以来35年以上、いじめ問題にお悩みの方に一貫して寄り添って参りました。お子さんやご家族が安心できる日常を取り戻していただくために、法的な専門知識と経験を活かして全面的にサポートいたします。あなたの未来への不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。 |
【出典・参照条文】
・埼玉弁護士会「示談あっせん」(https://www.saiben.or.jp/soudan/settlement.html )※費用・運用は変更される場合がありますので、最新情報は各弁護士会にご確認ください。
・民事調停法/裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)
・(注)本記事は一般的な解説であり、個別事案での手続の選択は事情により異なります。実際の対応にあたっては専門家にご相談ください。
掲載サイト:https://www.g-ijime.com/
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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この記事を書いた弁護士:弁護士 時田 剛志
学校・いじめ
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
埼玉弁護士会子どもの権利委員会委員長(令和7年〜)、北本市いじめ問題調査委員会委員長、埼玉県教育委員会学校いじめ問題外部専門員、以前はさいたま市、現在は新座市や蕨市のスクールロイヤーを務め、学校や教育委員会の事情にも精通する。自死・不登校のいじめ重大事態調査委員会の委員長経験も豊富で、共著「学校のいじめ対策と弁護士の実務」(青林書院)の執筆者でもあり、いじめ予防授業・学校向け講演の実績多数。力強い交渉と柔軟な解決策を武器にしており、広くいじめ・学校問題の対応に精通する。







