学校のいじめで損害賠償請求をする方法 必要な証拠・慰謝料の相場・弁護士に依頼すべき理由を徹底解説
【この記事のポイント】
お子さんが学校でいじめを受け、学校や加害者に損害賠償を請求したいとお考えの親御様へ。本記事では、いじめ防止対策推進法が定める「重大事態」の概要、民法・国家賠償法に基づく法的責任の追及方法、慰謝料の目安金額、証拠収集の具体的チェックリスト、学校への対応交渉の進め方、そして弁護士への依頼が有効な理由を弁護士が解説します。

1. いじめを受けたときの法的手段とは

1. いじめを受けたときの法的手段とは

我が子がいじめに遭っていると知ったとき、親御様の胸に去来する怒りや悲しみは計り知れないものがあります。しかし感情に任せた行動は解決を遠ざけます。法律に基づく「損害賠償請求」を検討することが、子どものために親ができる最も確実な選択肢の一つです。

◆ いじめ防止対策推進法と「重大事態」

2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」は、学校・教育委員会・自治体に対して、いじめの防止・早期発見・適切な対処を義務づけています。特に以下の「重大事態」が発生した場合は、学校設置者(自治体・学校法人)が調査委員会を設置し、事実関係を調査する義務があります。

重大事態①(生命・心身等重大被害)重大事態②(相当の期間の欠席)
いじめにより児童等の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある場合 (例:自殺企図・重傷・犯罪被害・財産の重大な毀損)いじめにより相当の期間(年間30日が目安)学校を欠席することを余儀なくされた疑いがある場合 (例:不登校が続いている・保護者が申立てた場合も認定)
【重要】
「重大事態」に該当すると判断した場合、学校は速やかに学校設置者に報告し、調査委員会を設置する義務があります。もし学校が対応をしない・事実を矮小化するような場合は、弁護士を通じて教育委員会への申入れや調査要求が有効です。

2. 法的責任の追及:誰に何を請求できるか

2. 法的責任の追及:誰に何を請求できるか

いじめに対して法的責任を追及する場合、請求相手によって適用される法律が異なります。

請求相手適用法律責任の内容立証のポイント
加害生徒本人民法第709条 (不法行為責任)中学生以上は責任能力があるとして、本人への直接請求が可能いじめの具体的行為と被害の因果関係
加害生徒の保護者民法第714条 (監督義務者責任)加害者が責任能力のない年齢(概ね小学生)の場合、保護者が監督義務者として責任を負う加害者の年齢・責任能力の有無、監督義務の怠り
公立学校・自治体国家賠償法 第1条1項教員・学校がいじめを認識しながら適切な対応を怠った場合(安全配慮義務違反)に自治体が賠償責任を負う学校がいじめを知りながら放置した事実、不作為の立証(学校との記録が重要)
私立学校・学校法人民法第415条 (債務不履行) 民法第715条 (使用者責任)学校の安全配慮義務違反により生じた損害について責任を負う在学契約上の安全確保義務違反、教員の過失と学校の使用者責任

3. 請求できる損害の種類と慰謝料の目安

3. 請求できる損害の種類と慰謝料の目安
損害の種類具体的な内容金額の目安
治療費・通院費怪我の医療費・通院交通費・精神科・心療内科の通院費・カウンセリング費用など実費全額(領収書で請求)
精神的損害(慰謝料) 軽度〜中程度のいじめ数か月程度の不登校・精神的苦痛(適応障害・うつ症状等)数十万〜150万円程度
精神的損害(慰謝料) 重篤・長期・悪質なケース長期不登校・重篤な後遺症(PTSD・うつ病)・組織的・継続的ないじめ・重大な暴行150万〜500万円以上
転校費用・塾費用等いじめと直接の因果関係が認められる転居・転校費用、学習機会の補填のための費用実費(因果関係の立証が必要)
逸失利益(後遺症がある場合)怪我・後遺症が生じなければ本来得られた収入分。重篤な障害が残った場合に請求個別事情により算定 (高額になるケースも)
死亡事案(遺族の請求)いじめを原因とした自死の場合、遺族固有の慰謝料・逸失利益を含む数千万円以上になることも
【時効に注意】
いじめによる損害賠償請求権は、損害及び加害者を知ったときから3年(不法行為の消滅時効・民法724条)で時効になります。ただし、子どもが未成年の場合は成年(18歳)になるまで時効が進行しないとされています(民法158条)。まずは早期に弁護士に相談してください。

4. 有利な解決に導く「証拠収集」の具体的チェックリスト

4. 有利な解決に導く「証拠収集」の具体的チェックリスト

損害賠償請求において最も重要なのは証拠です。以下の証拠を早期に収集・保全してください。

証拠の種類収集のポイント・注意事項
日付入りの記録・日記「いつ・どこで・誰から・何をされたか」をリアルタイムで記録。子ども自身の言葉で書いた日記は証拠価値が高い。日付・時間・場所・言葉・行為を具体的に
LINEやSNSのスクリーンショットアカウント名・日時・内容が確認できる形で保存。削除される前に全て保存(クラウドバックアップも)。ネットいじめの場合はURLやキャッシュも保存
身体の傷の写真と医師の診断書暴行による怪我は撮影日入りの写真と病院の診断書が必須。診断書には「いじめによる」旨を記載してもらえると尚良い
精神科・心療内科の診断書うつ病・適応障害・PTSD・起立性調節障害などの診断は賠償請求の根拠になる。「いじめが原因」と記載してもらえるよう医師に事情を伝える
学校とのやりとりの記録面談・電話での相談内容を録音(原則として違法ではない)。「いじめの事実はない」「大したことではない」など学校の不適切な対応を記録に残す
欠席記録・出席状況学校の出欠記録(欠席理由が「いじめ」であることが重要)。通知表・健康観察日誌など
目撃者・証人の証言クラスメートや担任・他の教師の証言(書面化が望ましい)。時間が経つと記憶が薄れ証言が取りにくくなるため早期に確保
重大事態調査報告書学校または教育委員会が重大事態として調査した場合、その報告書の開示を求める(情報公開請求も有効)

5. 解決への手順と弁護士への依頼

5. 解決への手順と弁護士への依頼

◆ 損害賠償請求の進め方(ステップ)

 ステップ具体的な行動
証拠収集上記チェックリストに沿って証拠を収集。弁護士に相談しながら並行して進めるのが最も効果的
学校・教育委員会への申入れ弁護士名義の内容証明郵便で事実認定と謝罪・賠償を申し入れる。弁護士が関与することで学校側の対応が変わるケースが多い
示談交渉加害者側・学校側との任意の示談交渉。弁護士が代理人として適切な賠償額を提示し交渉
調停・訴訟示談が成立しない場合は、民事調停または民事訴訟(地方裁判所・簡易裁判所)へ移行。証拠の整理・主張の立証は弁護士が担当

弁護士に依頼するメリット

  • 学校との交渉力:弁護士名義の申入れで学校・教育委員会の対応が変わる(記録に残した対応が迫られる)
  • 因果関係の立証:いじめと損害の因果関係の立証は専門的な法律知識が必要。証拠の出し方を誤ると請求が棄却されるリスクがある
  • 適正な賠償額の算定:学校・加害者側が提示する金額を鵜吞みにせず、適正額を交渉
  • 子どもへの精神的配慮:弁護士が代理人になることで、傷ついた子どもが直接対応する必要がなくなる
  • 費用:法テラス(日本司法支援センター)の審査を通れば弁護士費用の立替制度も利用可能

◆ 相談・通報窓口

相談・通報先内容
学校・担任・スクールカウンセラーまず最初に事実を伝え、対応を記録に残す。改善されない場合は次の窓口へ
教育委員会学校の対応が不十分な場合は上位機関に申入れ。重大事態の調査要求も可能
24時間子どもSOSダイヤル (0120-0-78310)文部科学省が設置する24時間無料相談窓口。子ども本人・保護者双方が相談可能
法務局・地方法務局 (人権相談)人権侵犯事件として申告することで、法務局が調査・関係機関への勧告等を行う場合がある
弁護士(法的手段が必要な場合)損害賠償請求・学校への申入れ・調停・訴訟等の法的手段が必要な場合は早期に弁護士へ相談

6. まとめ:一人で抱え込まずに専門家へ

6. まとめ:一人で抱え込まずに専門家へ

いじめによって子どもが負った身体的・精神的な傷、不登校による教育機会の喪失などは、「子ども同士の問題」で片付けられるべきではありません。これらは明確な違法行為であり、法律に基づいて適切な賠償を求める権利が被害者側にはあります。

法律のプロである弁護士のサポートのもと、正当な証拠を収集し、適切な請求を行うことで、子どもが受けた痛みを社会的責任として認めさせ、前を向いて歩む力を取り戻してください。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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