
いじめにより不登校などの重大事態が発生した際、学校が「いじめではない」と判断して調査を拒否するケースがあります。しかし、さいたま地裁の川口市いじめ裁判判決は、要件を満たす場合に学校が調査をしない裁量はないとし、不作為を違法と断じました。学校には調査義務があり、独自判断での拒否は許されません。弁護士は、この判決を根拠に調査実施を迫り、いじめの事実を法的に整理し、公正な第三者による調査を求めることができます。
「子どもがいじめで学校に行けなくなったのに、学校は『いじめではない』『家庭の問題だ』と言って調査をしてくれない」
「『重大事態』の申し入れをしたのに、教育委員会が『学校の対応は適切だった』として動こうとしない」
いじめに苦しむお子さんと保護者の方から、このような悲痛な相談が法律事務所に寄せられることが少なくありません。法律(いじめ防止対策推進法)は、いじめにより長期欠席などの被害が生じた場合、学校や教育委員会に調査を義務付けています。しかし、教育現場では「学校の裁量(判断)」で調査が見送られるケースが後を絶ちません。
なぜ、こうしたことが起きるのでしょうか。
そして、なぜこの局面で弁護士の介入が必要なのでしょうか。
今回は、学校側の「調査をしない」という判断を違法とした画期的な裁判例(川口市いじめ裁判・さいたま地裁令和3年12月15日判決)を紐解きながら、保護者が弁護士に依頼すべき理由を法的視点から解説します。
衝撃の判決~学校には「調査をするかしないか」を決める自由はない

学校や教育委員会が調査を拒否する際、よく使われるのが「教員の聞き取りではいじめの事実は確認できなかった」「不登校の原因はいじめではなく、本人の資質や家庭環境だ」という理屈です。
つまり、「教育の専門家である我々(学校・教委)が総合的に判断したのだから正しい(裁量の範囲内である)」という主張です。
しかし、さいたま地方裁判所はこの「学校側の裁量(判断の自由)」を明確に否定しました。
【川口市いじめ裁判判決(さいたま地裁 令和3年12月15日判決)の概要】
この事案は、中学生がいじめ(部活動内での仲間外れ、暴行、約束破り、SNSでの誹謗中傷等)により自傷行為や長期の不登校に追い込まれたにもかかわらず、学校や市教育委員会が「いじめではない」「母親の意向で休んでいる」と判断し、法律に基づく重大事態調査を長期間行わなかったことなどが問われたものです。
被告である市側は、「教諭らからの事情聴取に基づき、不登校の原因はいじめではないと判断したのであり、その判断に裁量権の逸脱・濫用はない(学校側の判断は尊重されるべき)」と主張しました。
これに対し、裁判所は次のように判示し、市側の主張を退けました。
「重大事態の発生を認知すべきときに認知しない裁量があるとは解されず、被告の主張は採用できない。」
つまり、法律が定める要件(いじめの疑い+年間30日以上の欠席など)が揃っているならば、学校や教育委員会には「調査をしない」という選択肢(裁量)はなく、自動的に調査義務が発生すると断じたのです。そして、調査を行わなかったことは国家賠償法上の違法であると認定しました。
なぜ学校は調査を拒むのか?~「疑い」と「確信」の取り違え

法律(いじめ防止対策推進法第28条)は、いじめにより重大な被害が生じた「疑い」があるときは調査を行うよう定めています。
しかし、学校現場では、この「疑い」という低いハードルを勝手に引き上げ、「いじめの事実が確信できない限り調査しない」という誤った運用が行われがちです。
川口市の事案でも、学校側は「いじめがあったとは思っておらず、そう考えているのは母親だけ」「原告(生徒)自身はいじめと思っていなかった」として調査を拒んでいました。しかし、そもそも「いじめがあったかどうか」を明らかにするために行うのが調査です。調査もせずに「いじめはない」と断定するのは、順序が逆なのです。
文部科学省のガイドラインでも、保護者から「いじめにより重大な被害が生じた」という申し立てがあったときは、学校がそう考えなくとも、重大事態が発生したものとして報告・調査に当たらなければならないと明記されています。 判決でも、不登校期間が30日に達した時点で、学校は重大事態の発生を認識し、網羅的な調査を行う義務を負ったと指摘されています。
保護者が弁護士に依頼すべき3つの理由

「学校が法律を守らない」という現実に直面した時、保護者個人の力だけで学校や教育委員会の重い扉をこじ開けるのは容易ではありません。ここで弁護士が介入する意義は非常に大きいと言えます。
①「裁量はない」という法的根拠を突きつけられる
弁護士は、前述の川口市判決やガイドラインを根拠に、「学校側の独自判断で調査を拒否することは違法である」と法的に主張できます。
「様子を見ましょう」「子供同士のトラブルです」とのらりくらりと対応を先延ばしにする学校に対し、「法第28条の要件(いじめの疑い+長期欠席等)を満たしている以上、貴校に調査を拒否する裁量権はない。直ちに調査組織を設置する法的義務がある」と迫ることで、事態を動かすことができます。
実際、この判決が出たことにより、「学校が認めなければ重大事態ではない」という教育現場の論理は、司法の場では通用しないことが明確に示されました。
②「事実」と「評価」を整理し、学校の論理を崩す
学校側はしばしば、「いじめ」を「ふざけ合い」や「トラブル」「喧嘩」と言い換えて矮小化しようとします。川口市の件でも、首を絞めて引き倒した行為を「喧嘩」「小競り合い」と評価していました。
弁護士は、保護者が持っている証拠(LINEの履歴、医師の診断書、子供の証言など)を法的な視点で整理し、「これは法第2条が定義する『心身の苦痛を感じる行為』に該当し、法第28条の『重大事態』に当たる」という事実認定を積み上げます。
感情論ではなく、「法律の定義に当てはまるか否か」というロジックで交渉することで、学校側の主観的な「いじめではない」という評価を覆すことが可能になります。
③公平・中立な「第三者」の選任を求める
いざ調査が行われることになっても、学校内部の人間だけで行われる調査(身内調査)では、事実が隠蔽されるリスクがあります。
弁護士は、調査組織の立ち上げ段階から関与し、ガイドラインに基づき、利害関係のない外部の専門家(第三者)を調査委員に入れるよう強く求めることができます。
川口市の判決でも、学校や市教委が十分な調査を行わずに「いじめはなかった」と保護者に伝えたことが、事態を複雑化・長期化させたと厳しく指摘されています。弁護士は、被害者側の代理人として、調査が公平に行われているか、報告書の内容に矛盾がないかを厳しくチェックする役割を果たします。
証拠の保全と時効の壁

いじめ問題は時間が経てば経つほど、証拠が散逸し、関係者の記憶が薄れていきます。
川口市の事案でも、学校側は、当初から適切な調査をしなかったため、後に第三者委員会が調査を開始した時には、すでに時間が経過しており、事実認定に困難を伴いました。
それでも裁判所は、残されたLINEの履歴や医師の診断書、経過の記録などから、いじめと不登校の因果関係を認めました。
弁護士に依頼するメリットの一つは、早期に証拠保全のアドバイスを受けられることです。
• 学校とのやり取りの録音
• 怪我の写真や診断書
• SNSのスクリーンショット
• 日記やメモ
これらは、後に「学校が調査義務を怠った」ことを証明する際の決定的な証拠となります。特に、学校側が「言った言わない」の争いに持ち込もうとする際、録音データや書面での記録(要望書など)は強力な武器になります。
おわりに

いじめ重大事態において、学校が調査をしないことは、単なる対応の遅れではなく、「法的な義務違反(違法行為)」です。川口市の裁判例は、そのことを明確に示しました。
お子さんが苦しんでいるにもかかわらず、学校が「いじめではない」「調査は必要ない」「家庭の問題だ」と壁を作っている場合は、諦めずに弁護士にご相談ください。
「調査をするかどうかの裁量権は学校にはない」。
この強力な法的武器を使って、お子さんの尊厳と「知る権利」を守るための戦いをサポートします。 学校という密室で、お子さんとご家族だけで戦う必要はありません。法の専門家を味方につけ、正当な権利を主張していきましょう。
最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

私たちは、開所以来35年以上、いじめ・学校問題にお悩みの方に一貫して寄り添って参りました。
子どもや保護者の方が日常を取り戻していただくために、法的な専門知識と経験を活かして、全面的にサポートいたします。あなたの未来への不安を解消し、前を向くきっかけ作りをお手伝いさせてください。
お客様満足度は92.9%となっており、多くのお客様にご満足いただいております。
私たちの持てる知識と経験を活かして、みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。
まずはグリーンリーフ法律事務所にご相談ください。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。





