紛争の内容

ご依頼者の方のお子様が、学校内において他の生徒から暴行を受け、怪我を負われました。お子様は医療機関を受診し、一定期間の治療を要することとなりました。
学校内で生じた生徒間のトラブルについては、まず学校が事実関係を調査し、双方の保護者間で話し合いが行われることが一般的です。しかし本件では、治療費の負担や慰謝料といった損害賠償の点について、当事者間の話し合いだけでは折り合いがつかない状況にありました。

ご依頼者の方としては、お子様が受けた被害に対して相応の賠償がなされるべきであると考えておられる一方で、お子様が今後も学校生活を続けていくことを踏まえ、紛争が長期化したり、大ごとになったりすることは避けたいというお気持ちもお持ちでした。被害に見合う賠償を得つつ、できる限り穏便に解決することが求められる事案でした。

交渉・調停・訴訟等の経過

ご依頼を受け、まず事実関係の確認から着手しました。

お子様およびご依頼者の方から事故の経緯を詳しくお聴きするとともに、学校が作成した報告書や聴取結果、診断書、診療録等の資料を収集し、暴行の態様、受傷の内容、治療の経過を客観的に整理しました。
そのうえで、相手方に対して内容証明郵便を送付しました。内容証明郵便では、暴行の事実とこれによって生じた損害を具体的に特定し、不法行為に基づく損害賠償義務があることを明示したうえで、賠償を求める旨と回答の期限を記載しました。書面で正式に請求を行うことにより、相手方に本件を真摯に受け止めていただき、具体的な協議の場を設けることを目指しました。
その後、相手方にも弁護士が就任し、弁護士同士での交渉が開始されました。代理人を通じた交渉となったことで、感情的な対立に陥ることなく、損害の内容と金額について冷静かつ具体的な協議を行うことが可能となりました。
交渉においては、治療費および通院交通費について実費を資料に基づいて明らかにしたうえで、入通院慰謝料については、通院期間および通院実日数を踏まえ、裁判上の基準を参考に算定した金額を提示しました。

相手方代理人からは、暴行の態様や症状の評価について意見が示されましたが、これに対しても診断書や診療録の記載を引用しながら一つひとつ反論し、協議を重ねました。

本事例の結末

交渉の結果、治療費、入通院慰謝料のいずれについても、双方が納得できる水準で折り合いがつき、示談が成立しました。
示談書には、賠償金の支払いに関する条項に加え、今後お子様に対して接触しないこと、本件について相互に口外しないことなどを盛り込み、お子様が安心して学校生活を送れるよう配慮した内容としました。
調停や訴訟といった裁判所の手続に進むことなく、交渉のみで解決に至ったことにより、ご依頼者の方およびお子様の負担を最小限に抑えることができ、円満な解決となりました。

本事例に学ぶこと

学校内で生じた暴行によって怪我を負った場合、加害行為を行った生徒およびその保護者に対して、不法行為に基づく損害賠償を求めることができます。学校が間に入って話し合いが行われることも多いのですが、学校はあくまで教育機関であり、損害賠償の金額について判断したり、その支払いを実現したりする立場にはありません。賠償の問題は、当事者間で別途解決する必要があります。
その際に重要となるのが、請求の根拠を客観的な資料によって固めておくことです。暴行の事実については学校の調査資料や聴取結果が、受傷の内容と程度については診断書や診療録が、それぞれ重要な証拠となります。事案が起きた直後から、できる限り記録を残しておくことが、後の交渉を大きく左右します。
さらに、学校内のトラブルでは、当事者であるお子様がその後も同じ学校で生活を続けていくという事情があります。紛争が長引けば、お子様自身の負担が大きくなってしまいます。本件では、弁護士が代理人として交渉にあたったことで、当事者が直接対立する構図を避け、調停や訴訟に進むことなく短期間で解決することができました。
お子様が学校でトラブルに巻き込まれ、お困りの際には、早い段階で弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

弁護士 時田 剛志
弁護士 遠藤 吏恭