【学校・いじめ】「ごめんね」「いいよ」で終わりではない~いじめの「解消」を判断する厳格な法的要件

いじめ防止対策推進法に基づく国の基本方針では、いじめの「解消」と判断するために2つの要件を定めています。第一に、いじめ行為が止んでいる状態が「少なくとも3か月を目安」に継続していること。第二に、被害児童生徒が「心身の苦痛を感じていない」ことが、本人及び保護者への面談で確認できること。謝罪だけで安易に解消とは認められません。また、解消はあくまで一つの段階に過ぎず、再発防止のため継続的な見守りが必要です。

いじめの解消とは

いじめの解消とは

学校生活において、いじめ問題が発生した際、多くの保護者や教育関係者が直面するのが「このいじめはいつ終わったと言えるのか」という難問です。 加害児童生徒が謝罪し、表面的には仲直りしたように見えても、被害を受けた側にとって恐怖や不安が消えていなければ、それは解決とは言えません。

実は、いじめ防止対策推進法に基づく国の指針(「いじめの防止等のための基本的な方針」)には、いじめが「解消」したと判断するための明確な要件が定められています。これは、感覚的な判断でいじめ対応を打ち切ることを防ぐための重要なルールです。

今回は、法律実務の視点から、いじめの「解消」と判断されるための2つの要件、そして「解消後」に学校や保護者が注意すべき点について、文部科学省の基本方針に基づき詳しく解説します。

法律・指針が定める「いじめ解消」の定義

法律・指針が定める「いじめ解消」の定義

まず大前提として、いじめ防止対策推進法(以下「法」)において、いじめは「行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義されています。つまり、被害者の主観(つらいと感じているかどうか)が認定の核となります。

では、そのいじめが「なくなった」と言えるのはどのような状態でしょうか。 文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下「基本方針」)は、いじめが「解消している」状態とは、「単に謝罪をもって安易に解消とすることはできない」2つの要件が満たされている必要があると定めています。

①いじめに係る行為が止んでいること(行為の停止)
②被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと(苦痛の除去)

この2つが「両方とも」満たされて初めて、学校は「いじめが解消した」と判断することができます。それぞれの要件について、具体的に見ていきましょう。

要件①「いじめに係る行為が止んでいること」と期間の目安

要件①「いじめに係る行為が止んでいること」と期間の目安

第1の要件は、客観的な事実として、いじめ行為が止まっていることです。 ここで重要なのは、単に「昨日、今日はやられていない」という短期的な停止では認められないという点です。

基本方針では、いじめ行為が止んでいる状態が「相当の期間継続していること」が必要であるとし、この「相当の期間」とは、「少なくとも3か月を目安とする」と規定しています。

なぜ3か月なのか?

いじめは、教員の指導によって一時的に収まったように見えても、大人の目が届かないところで再開されたり、形を変えて(例:暴力から無視やネットいじめへ)陰湿化したりすることが多々あります。そのため、一時的な停止をもって「解決」と判断せず、一定期間の経過観察を義務付けているのです。

3か月以上必要なケース

また、「3か月」はあくまで目安です。いじめの被害が甚大である場合や、長期にわたって行われていた場合などは、この目安にかかわらず、学校の設置者(教育委員会等)や「学校いじめ対策組織」の判断により、より長期の期間を設定するものとされています。もし、観察期間中に再びいじめ行為が確認されれば、行為が止んでいないと判断され、時計の針はリセットされます。改めて指導を行い、そこからまた「相当の期間」を設定して状況を注視しなければなりません。

要件②「被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと」

要件②「被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないこと」

第2の要件は、被害者の主観に関するものです。 いじめ行為(叩く、悪口を言うなど)が客観的に止まっていたとしても、被害児童生徒が「またやられるかもしれない」と怯えていたり、学校に行くのがつらいと感じていたりする場合は、いじめは解消していません。

基本方針は、いじめ行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、「被害児童生徒がいじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること」を要件としています。

確認の方法

この要件を満たしているかどうかの確認は、教員の推測で行ってはなりません。必ず、「被害児童生徒本人及びその保護者に対し、面談等により確認する」ことが求められています。

学校現場では、「被害者も笑顔で遊んでいるから大丈夫だろう」という「見かけの様子」で判断されてしまうことがありますが、被害者が加害者に迎合して無理に笑っているケース(観衆・傍観者の圧力など)も少なくありません。法的には、本人が「もう苦痛を感じていない」と明言し、かつ保護者もその様子を見て安心できている状態が確認されて初めて、この要件をクリアしたことになります。

誤解されがちな「解消」のタイミング

誤解されがちな「解消」のタイミング

いじめ対応の現場では、法的な要件を満たす前に、学校側が「解決済み」として対応を終了させてしまい、トラブルになるケースが後を絶ちません。よくある誤解について解説します。

×「加害者が謝罪したから解決」

前述のとおり、基本方針は「単に謝罪をもって安易に解消とすることはできない」と明記しています。謝罪は解決への第一歩に過ぎず、その後「行為が止まり続けること」と「被害者の心の傷が癒えること」が確認されなければなりません。

×「喧嘩両成敗で仲直りさせたから解決」

いじめは対等な関係での喧嘩とは異なり、一方的な力の不均衡が存在します。無理やり握手をさせて「仲直り」の形をとらせても、被害者の恐怖心が消えていなければ、要件②(苦痛の除去)は満たされません。

×「3か月経ったから自動的に解消」

「3か月」は目安であり、自動的に解消となる期限ではありません。3か月経過した時点で、必ず「学校いじめ対策組織」において、被害者・保護者の聴き取り結果などを踏まえた組織的な判断を行う必要があります。

「解消」はゴールではなく、通過点

「解消」はゴールではなく、通過点

非常に重要な点として、基本方針は、いじめが「解消している」状態とは、「あくまで、一つの段階に過ぎない」と警告しています。

一度「解消」と判断されたとしても、人間関係の変化や些細なトラブルをきっかけに、いじめが再発する可能性は十分にあります。 そのため、学校の教職員は、「解消した」と判断した後も、当該児童生徒の様子を「日常的に注意深く観察する必要がある」とされています。

つまり、法的な「いじめ解消」とは、「もうこの件は扱わない(事件終了)」という宣言ではなく、「緊急的な対応体制から、日常的な見守り体制へ移行する」というフェーズの切り替えを意味すると捉えるべきでしょう。

学校・保護者がとるべき対応

学校・保護者がとるべき対応

学校側の留意点

いじめの解消判断は、担任教師一人の判断で行ってはなりません。必ず「学校いじめ対策組織(校長、教頭、生徒指導主事、スクールカウンセラー等で構成)」において情報を共有し、組織として判断する必要があります。 また、解消していない段階(3か月未満や苦痛が残っている状態)では、被害児童生徒を徹底的に守り抜く責任があり、支援内容や情報共有、教職員の役割分担を含む「対処プラン」を策定し、実行し続ける義務があります。

保護者側の留意点

もし、学校から「いじめは解決しました」と言われても、お子さんがまだ苦しんでいる様子があれば、それは法的には「解消」していません。 「まだ夜眠れないようだ」「学校に行くのを渋っている」といった具体的な様子を学校に伝え、「国の基本方針では、本人が苦痛を感じていないことが解消の要件となっているはずだ」と主張することは正当な権利です。

また、学校が3か月経過前に対応を打ち切ろうとした場合も、「行為が止まってから3か月を目安に見守る必要があるのではないか」と確認することができます。

おわりに

おわりに

いじめ問題において、大人が最も優先すべきは、被害を受けた子どもの心身の安全と安心です。

法律やガイドラインが定める「解消」の要件は、形式的な手続きではなく、子どもの尊厳を守るための「安全装置」です。「3か月の継続」と「苦痛の除去」。この2つのハードルを設けることで、安易な幕引きを防ぎ、真の解決を目指すのが法の趣旨です。

いじめが起きたとき、焦って解決を急ぐのではなく、法が定めるプロセスに則り、じっくりと子どもに寄り添い続ける姿勢が、学校と保護者、そして地域社会全体に求められています。

最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

最後に見ていただきたい学校問題サポートのこと

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志

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